夜中の長電話。
不意にとってしまった着信は、
元カレから、でした。
仕事替えました、とか。
引越します、とか。
結婚します、とか。
そういう報告なのかと、
内心、ドキドキ。
ドキドキする自分が可笑しい。
そもそも、だいたい、
昔の男がいつまでも自分を好きな訳ないし。
昔の男をいつまでも好きな訳じゃないし。
貴方と私は今や無関係の人生を送っているんだから、
どうだっていいじゃない、と。
そんな風には簡単に割り切れない、
この変な気持ちはなんなんでしょう。
卒業して、就職して、
ちゃっかり、しっかり社会人になった彼と、
あの時には、お互いになかった、
大人としての気遣いを心得た会話。
1時間ほど大人の世間話をして、
突然、彼は本音を語り始めました。
当時、19歳で大学生だった彼は、
真剣に悩んでいた、と。
自分の経済力に歯痒さを感じ、
既に社会人だった私に劣等感を抱いていた、と。
大学を辞めて、
働いて、一緒に住んで、
そういう夢を抱いては、もがき苦しんだ、と。
あの頃は。
自分の力のなさを悔やんでいたけど、
今となっては。
協力することを考えられなかった自分は、
やっぱり幼すぎたと思う、と。
本当に本当に好きだったのに、と。
彼の成長は嬉しくて、
その気持ちはとても有難い、
とても幸せな気分になったけど。
思ひ出は、いつも美しい。
私も、本当に本当に彼が好きでした。
出会いがもっと早ければ、と。
今の生活を全て投げ出して、
彼と歩んでいきたいと。
だけど、そうは出来ない情もあり、
悩んで悩んだ挙げ句、
決意しようとした頃には、
彼の心は私ではない誰かに奪われていました。
あんなに夢中だった彼は、
いとも簡単に離れていき、
自分の怠惰は棚に上げて、
その喪失感の中で悲しみ、
そして私でない誰かを羨み、
大好きだった彼を恨む、
そういう日々を過ごしたこともあったのです。
思ひ出は、いつも美しい。
美化しなければ、前に進めないから。
色々あったけど、好きになって良かったと、
素敵な日々だったと浄化して、
歩んでゆくのが人間ってもんです。
それはきっと彼も同じこと。
ともすれば、また男と女の関係へと揺れ動きそうな、
そんな会話の先に、
私の幸せはあるのでしょうか。
きっと、たぶん、ありません。
かつての愛情に感謝の念を伝えて、
たまには仲間と呑もう、という社交辞令と共に、
電話を切りました。
思ひ
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